介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算の算定は、職場環境等要件をクリアする必要があります。一般的なキャリアパス要件等届出書を作成する場合は、過去に取り組んだ事項にチェックマークをつけて終わりとしていることでしょう。しかし、せっかくの機会ですし、経営に役立つ取り組みにしてみませんか。

資質の向上について

資質の向上は、職場環境等要件の中でトップに掲げられている項目です。この中で私のイチオシは、「小規模事業者の共同による研修のための制度構築」です。まず、介護業界は同業他社との関係が希薄だと思います。せっかく同じ地域にある事業所なのにまったく知らん顔になっていませんか。とてももったいないです。そこでまず、情報交換会の開催をお勧めします。地域高齢者・要介護者状況、医療機関連携状況、行政対応状況、スタッフ採用状況、研修方法、加算の算定状況等の情報交換・共有は事業所経営にとても役立ちます。情報交換会の成功のポイントは情報の出し惜しみをしないことです。

相互交流研修

次に、相互交流研修です。自事業所の勤務が長くなると考え方がどうしても画一化してしまいます。それを防ぐ方法は新しい風を入れること、すなわち、自社スタッフが他事業所に研修に行く、他事業所から研修生を受け入れることです。これらは、自事業所スタッフへの良い刺激となります。そして、学んだ良いところ・悪いところを持ち帰ってフィードバックすることで、スタッフのモチベーションのアップ、知識のブラッシュアップへとつながっていきます。

相互交流研修の次の目的

単発に相互研修をするだけでも新しい風を吹かせることができますが、徐々に計画や目的を持って実施してみてはいかがでしょうか。私は目標として、「本来の」マネジメントの導入が良いと考えています。よく、管理者やリーダーが現場と同じ動きをしてしまうことで、役職者本来の仕事をしていないと耳にします。また、現場は管理者やリーダーに現場の仕事をするように要求してしまうことが多々あります。実のところ、管理者やリーダーという役職者が何をするのか役職者本人はおろか現場もわかっていないと、事業所は統率がとれなくなり、結果として経営者の経営ではなく現場に流されてしまう経営に陥ってしまいます。そうなるとビジョンもベクトルも朝令暮改が起こってしまい、スタッフ間で信頼関係が揺らぎ、声の大きい人がのさばるような職場と変わっていってしまいます。

研修先のあてがないということも聞きますが、まずは管理者が近隣に連絡をとってみることから始めてみましょう。そして、地域の中にはマネジメントができている事業所は必ずあります。その見分け方はスタッフ採用に困っていない事業所です。おそらくスタッフが辞めない⇒定着率が良い⇒居心地の良い職場⇒スタッフが求職者を紹介してくれるという良好な循環をしているはずです。このような事業所は必ずマネジメントが上手に行われていますので、ぜひそのマネジメントシステム、苦労話、工夫や改善したところを教えてもらってください。

マネジメントの大切さ

マネジメントとは、目標に向かってそれぞれの立場の人間が自分でやるべきことを理解して、そして自発的に行動できるようにサポートすることです。交流を通じて模範事業所のマネジメントを模倣してみることで、これまでわからなかった管理者やリーダーの役割、組織としてのマネジメントが徐々に身についていくと思います。その動きができるようになると事業所全体が、目標に対して働きやすく活気のある職場になっていくことでしょう。

藤尾智之氏
税理士・介護福祉経営士

1996年、法政大学経済学部卒業
2000年、社会福祉法人に入職後、特別養護老人ホームの事務長として従事する。
2011年に税理士試験に合格し、大手税理士法人を経て藤尾真理子税理士事務所に入所。介護、障害を中心とした社会福祉事業に特化した経営サポートを展開する一方、社会福祉法人の理事や監事、相談役を務める。
著書に「税理士のための介護事業所の会計・税務・経営サポート」(第一法規)がある。
さすがや税理士法人URL: https://fujio-atf.jp/