介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という)は、要支援者等を対象とした「介護予防・生活支援サービス事業」と、65歳以上の全高齢者対象とした「一般介護予防事業」の2本柱で構成されます。
このうち一般介護予防事業は、住民互助や民間サービス等との連携を通じ、要介護状態になっても住み慣れた地域でできる限り自立した生活を送れる地域の実現を目指すことを目的としています。ここでは、一般介護予防事業について詳しく紹介していきましょう。
一般介護予防事業の目的
介護予防・生活支援サービス事業は、要支援認定を受けた高齢者と、「基本チェックリスト」による判定で、要介護・要支援となるリスクが高いと判定された高齢者(事業対象者)を対象としているのに対し、一般介護予防事業では、「すべての第一号保険者(65歳以上の高齢者)及びその支援のための活動に関わる者」を対象としています。
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つまり、介護の入り口よりもさらに前の段階から予防を行い、高齢者の健康と暮らしの向上を目指そうとするのが、一般介護予防事業の主な目的です。
さらに、一般介護予防事業では、高齢者の生活機能全般の改善を重要視するのが特徴です。これまでの介護予防事業では、要介護状態の原因となりやすい生活習慣病の予防や、転倒予防に向けた筋力訓練など、「心身機能」の改善に偏る傾向が見られましたが、新制度では、日常生活動作の向上や社会活動への参加、生きがい作りといった要素にもバランスよく働きかける取り組みが重要視されます。
例えば、高齢者が気軽に集える居場所の確保や、地域住民同士の交流を促すサロンの開設、生きがい作りを目的としたサークル活動などが挙げられるでしょう。
実質、介護保険外の事業となるため、既存の枠組みにとらわれない新たな支援サービスの創出も期待されています。
一般介護予防事業の内容
介護予防把握事業
地域の実態・ニーズ調査により収集した情報の活用により、自宅での閉じこもりやうつ病、栄養不足など何らかの問題を抱えた高齢者を早期に把握し、介護予防活動へ繋げることを目的としたものです。
介護予防普及啓発事業
介護予防に関する基本的な知識の普及を目的としたパンフレットの作成や講座の開催を通じ、住民一人一人の主体的な介護予防活動を支援していく事業。介護予防教室や専門職を講師とした運動教室などが挙げられます。
地域介護予防活動支援事業
介護予防の知識を有した住民ボランティアの育成や活動支援など、ボランティアが地域でより有意義な活動ができるよう支援する事業を指します。
一般介護予防事業評価事業
各々の事業が適切かつ効率的に実施されているかどうか、その実態を把握し、総合事業全体の改善を図る事業。住民ボランティア活動への参加状況や認知度などが評価されます。
地域リハビリテーション活動支援事業
住民、介護職員などを対象とし、リハビリ専門職等による介護予防に向けた具体的な助言を実施する事業。通所、訪問、地域ケア会議、公民館などにおける介護予防の取組み機能の強化を目指します。
介護事業者は参入すべきか
一般介護予防事業は、高齢者の健康と自立生活を支援する「介護保険外サービス」です。従来の介護保険サービスとは異なり、市町村が独自の財源で実施する事業のため、需要のないところで安易に新規事業を導入してしまうと、採算割れしてしまう恐れがあります。
一方、アイディア次第でさまざまな事業が展開できる可能性があります。例えば、旅行や外出、趣味を支援するサービス、フィットネススタジオなど、事業所の強みを活かし、利用者や地域住民のニーズにマッチしたサービスの創出が可能です。
既存の介護事業者が、一般介護予防事業に参入するかどうかは賛否両論ですが、介護保険事業以外での収益を拡大させるチャンスにもなり得ます。今後の事業戦略の一つとして参入を検討する際は、地域の実情やニーズをしっかりと把握し、さまざまな地域資源と連携を図りながら進めるようにしましょう。