平成27年4月から、全国各地で導入が進められている 介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という)。総合事業は、市町村が、それぞれの地域の特性を活かしながらサービスを提供できる「地域支援事業」の1つとして位置づけられています。総合事業の導入により、年齢や健康状態に関わらず柔軟かつ継続的な介護予防サービスを提供し、健康寿命の延伸を目指します。
ここでは、地域支援事業における総合事業の位置づけを考えていきましょう。

地域支援事業の概要

地域支援事業は、高齢者が要介護状態になることを防ぎ、要介護状態になっても住み慣れた地域において、できる限り自立した生活を営むことができるよう支援することを目的とした事業として、平成18年4月に施行されました。

地域支援事業では、市町村が実施主体となり、地域の実情および高齢者のニーズ、生活実態に応じたサービスが提供されるのが特徴の1つです。
また、要介護認定 で「非該当(=自立)」と認定され、支援の対象から外れていた高齢者も含め、全ての高齢者としています。

これまでの地域支援事業の内容

地域支援事業が導入された当初は、65歳以上のすべての高齢者を対象とした介護予防一般高齢者施策と、要支援・要介護状態になる可能性の高い虚弱高齢者(特定高齢者)を対象とした介護予防特定高齢者施策の2本柱で事業が展開されていました。
その後、平成23年に内容が一部改定され、以下の3事業に分類されました(平成24年4月施行)。

介護予防事業

要介護認定 で非該当と認定された高齢者に対し、介護予防に関する情報を提供したり、地域ボランティア活動などへの参加を支援するもの。また、特定高齢者と認定された高齢者に対しては、公民館などで受けられる介護予防サービスの利用や、自宅への訪問指導を通じ、要介護状態を未然に防ぐよう働きかけを行います。

包括的支援事業

地域包括支援センター における介護予防を目的としたケアマネジメントの実施、各種相談業務、権利擁護業務を指します。

任意事業

市町村が、地域の実情や住民ニーズに応じて独自に実施するもの。家族介護を支援するサービスやケアプランのチェックによる費用効率化、介護する家族に対する支援策などを含みます。

総合事業の創設による変更点

さらに平成26年の改定では、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保推進法)」の成立により、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが、地域支援事業の中に創設されました。

その1つとして挙げられるのが、「総合事業」です。総合事業の導入により、それまで要支援1・2と認定された高齢者に対し、全国一律の内容、料金で提供されていた介護予防給付のうち、介護予防訪問介護及び介護予防通所介護は、地域支援事業の形式へ移行。従来の介護予防事業と合わるなど、大きな再構築が行われました。

総合事業の創設により、65歳以上の高齢者を対象とした地域支援事業の対象範囲が拡大されました。同時に、比較的介護度が低い、要支援1・2の高齢者及び要支援・要介護に認定される可能性の高い高齢者の暮らしを地域住民が主体となって支援する仕組みが強化されていきます。これらの取り組みは、2025年を目処に実現を目指す地域包括ケアシステムの基盤として欠かせないものとなっていくでしょう。