事業の成長に欠かせない職員の人材育成。離職率の高さや人材不足が問題視されている介護業界では、一人の人材をいかにして育てあげ、事業全体の社会的評価や収益に繋げていくかという点が課題になります。そのため、事業者は人材育成のプランを考えておくことが重要です。今回は厚生労働省が推進している「キャリアマップ、職業能力評価シート導入・活用マニュアル」を参考に、介護人材育成のポイントについて説明します。

キャリアマップの概要と利用方法

キャリアマップには、各業種ごとに標準的な職業能力の目安が示されています。職業能力とは、職員が成果につながる行動を起こすために必要な知識・能力のこと。職業能力は、厚生労働省が策定した「職業能力評価基準」を元に1~4レベルに段階付けがされており、各レベルに到達するまでの標準年数や習熟度を把握するための目安を知ることができます。
さらに、キャリア形成の流れについても一目で理解が可能です。例えば在宅介護業では、実務経験1~2年程度のケアスタッフ(初級)からスタートし、専門性の高い業務に対応可能な「熟練キャリア」、部門責任者やリーダーの役割を担う「マネジメントキャリア」、介護職員を管理・指導する立場になる「教育キャリア」の4つを設定しています。
キャリアマップは、職員一人一人が自身の能力に対する意識を高めることに活用されます。また、課題を把握することによりキャリア形成に必要な具体的な行動を促進することができるでしょう。

職業能力評価シート作成の概要と利用方法

職業能力評価シートは、評価シート(本体)とサブツールの2つで構成されています。評価シートでは、今持っている知識と能力、習熟度をチェックすることが可能です。各項目に対して「一人でできている」「ほぼ一人でできている(一部、上位者や周囲の助けが必要なレベル)」「できていない(常に上位者や周囲の助けが必要なレベル)」の3段階で評価する形式になっています。自己評価と上司評価の欄が設けられていますので、その結果をもとに、職業能力を向上させていくための方法や目標を話し合うことが可能です。職員の主観にのみ頼らず客観的な評価を交えていくことで、よりその成果が得られやすくなると言われています。
サブツールは、評価シートへの記入をスムーズに行うために作成されました。判定基準が詳細にまとめられていますので、評価に悩んだ際に参照することができます。

厚生労働省のウェブサイトには、評価シートを用いた人材育成の取り組み事例が掲載されています。事例を元に、これらのツールをどのように運用するか検討していくと良いでしょう。

実際の介護人材育成の場面では、上記の内容に加え職場の人間関係や環境を向上させる取り組みも必要です。評価シートを作成することによって、職員同士のコミュニケーション機会も自然と増えることが期待されます。その機会を逃さず、職員の声にしっかりと耳を傾けることが大切です。