平成24年に改正された 介護保険法 には「労働法規の遵守」が定められ、労働基準関係法令に違反した介護事業所は事業所認可の取り消しなど厳しい処罰が行われることになりました。この改正には、介護人材の不足が叫ばれるなか、未だ改善されない離職率を改善させる思惑があると考えられます。採用した人材をより長く雇用していくためにも、開業の段階から労働条件に対する正しい認識を持つことが大切です。

今回は、厚生労働省が作成したパンフレット「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」の一部をわかりやすく解説します。

労働条件の明示について

事業者は、採用する全ての職員に対して労働条件の詳細を明示した書面を交付しなければなりません。労働基準法第15条に基づき、明示すべき労働条件として、
①労働契約の期間の有無(期間のある場合はその期間)
②更新の有無と更新する場合の基準
③始業及び終業の時刻(休憩時間、労働者を2組以上に分けて就業させる場合には終業時転換に関する事項、時間外労働の有無休日、休暇の定め等も含む)
④賃金の計算および支払方法、昇給に関する事項
⑤退職に関する事項(解雇の事由も含む)
⑥就業の場所と従事する業務の内容
の6つが挙げられています。その他に、臨時手当、賞与、表彰等について別途規定している場合は、労働条件として明示しなければなりません。パートや期間採用などの雇用形態でも同様です。後々トラブルのないよう必ず書面に示し契約を行うようにしましょう。

就業規則と労働時間について

常時10人以上の職員を使用する事業者は、就業規則を作成し、労働基準監督所長に提出しなければなりません(労働基準法第89条)。就業規則には、雇用契約時に明示する労働時間および休憩時間、休日、賃金、退職に関する事項の他、就業上必要なルールを実際の就労実態に添う内容で明示する必要があります。また、就業規則は職員に周知されなければ効力を有しません。そのため、職員がいつでも容易に確認できる状態(配布や掲示など)にしておく必要があります。

介護事業の場合、労働時間に関する規定が不十分な場合にトラブルが生じやすくなります。夜勤中の休憩(仮眠)時間、訪問介護中の移動または待機時間の扱い、交替勤務時の記録作成にかかる時間など、直接現場に従事する時間以外についても、詳しく規定しおくことが重要です。なお、時間外勤務や休日出勤については、「時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)」を締結し労働基準監督署に届け出を行った上で、その範囲内でなければなりません。

賃金について

労働時間に応じた賃金(時間給など)の場合は、正確に記録・管理された労働時間数に応じて算出します。時間外勤務や休日出勤、夜勤に対する手当の単価は、労働基準法第37条に基づき、適切な割り増し料金賃金を支払わなければなりません。また、全ての職員に対して、各都道府県が定める地域別最低賃金を下回ることは禁止されています。

安全衛生について

常時50人以上の職員を使用する事業者は、衛生管理者および産業医を職員数に応じた必要な人数、選任しなければなりません。また、職員を中心に構成した衛生委員会を設定し、職場の衛生管理体制を確保する必要があります。10人以上50人未満の規模では、衛生推進者を選任します。担当者は職員の健康障害の防止、健康増進、労働災害の防止に関する業務を行います。
事業者は、全ての職員に対して定期健康診断を実施する義務があります。雇用形態にかかわらず、入職時と年に1度確実に行うようにします。夜勤のある職員については、配置変えの際および半年に1回実施しなければなりません。また、常時50人以上の職員を使用する事業者は定期健康診断の結果を遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

介護現場では、夜勤などを行う可能性があり、上記の内容に遵守した形で勤怠管理を徹底し、過不足のない人材の確保が重要になります。また、上記の他に各種休暇についての規定も、厚生労働省のウエブサイト等に詳しく解説されていますので、ぜひ参考にしてみてください。