小規模多機能型居宅介護 は、利用者の状態や家族の都合に応じて、通所、宿泊、訪問のいずれかのサービスを組み合わせて利用できる地域密着型サービスの1つです。
家庭的な雰囲気の中、病気や障害があってもできる限り自立した生活を送れるよう、生活支援や機能訓練を行っています。開設にあたっては、単に基準を満たしているだけではなく、地域資源の活用や住民との連携など、利用者のニーズに沿ったサービスの創出が肝要となります。
ここでは、小規模多機能型居宅介護の事業所を開設する手続きやそのポイントを紹介していきましょう。

小規模多機能型居宅介護の概要

小規模多機能型居宅介護は、2006年に創設された「地域密着型サービス」の1つに位置付けられます。

地域密着型サービスには、小規模多機能型居宅介護の他に、夜間対応型訪問介護や認知症対応型共同生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを含む全9種類のサービスで構成されています。これらのサービスを利用者の状態やニーズに応じて柔軟に組み合わせ、要介護状態であっても住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう支援しています。

「通い」、「宿泊」、「訪問」の各サービスを24時間365日体制で提供する小規模多機能型居宅介護では、サービスごとに別々の事業所からスタッフが派遣されるのではなく、常に同じ事業所から、顔なじみのスタッフが対応する点で、利用者が安心してサービスを受けられるメリットがあります。

小規模多機能型居宅介護の設置基準

人員、設備、運営に関する主な基準は、以下の通りです。市町村によって内容が異なる場合があるため、あらかじめ事業所を開設しようとする市町村の窓口で内容を確認しておくようにしましょう。

人員基準

事業所の代表者1名(法人理事長などが該当)、常勤管理者1名(業務に支障がない場合は、他職種と兼務可能)、ケアマネージャー1名の他、利用者3名ごとに通いサービスの提供に当たる従事者各1名以上、訪問サービスに当たる従事者を1名以上、夜間サービス従事者及び宿直者1名以上の人員が必要です。従事者のうち1名以上は看護職員とする必要があります。

設備基準

利用者と地域住民の交流機会が確保される地域に設置しなければいけません。あまりにも人通りがない地域や、学校や商店がなく世代を超えた交流が難しい地域での開設は避けるべきでしょう。
施設の間取りでは、居間・食堂の合計が3平方メートル以上、宿泊室は、7.43平方メートル以上確保し、かつ、プライベートが確保されているなどの規定が設けられています。また、台所や浴室、トイレなどの生活に欠かせない設備のほか、必要に応じて相談室や事務スペースなどを確保します。

運営基準

利用料の受領、居宅サービス計画書の作成、協力医療機関等との支援体制整備の他、事業所の運営報告を行う「運営推進会議」を設置し、2カ月に1回以上、事業の運営に関する意見や要望、助言を聞く機会を設ける義務があります。運営推進会議には、利用者とその家族、事業所を所轄する市町村職員、地域包括支援センター 職員、地域住民の代表者が参加します。

開設するために必要な手続き

まずは、会社(法人)を設立します。既に設立されている会社を利用して事業を始める場合は、定款の事業内容に「介護保険法 に基づく小規模多機能型居宅介護事業」を追加し法務局で変更登記を行います。

次に、拠点となる事業所を選定します。設備基準の内容に応じた広さ、間取りであるだけではなく、立地、地域の特性についても十分配慮しましょう。
事業所が決まったら、従業員採用と必要備品の準備を始めます。以上の手続きが終了したら、いよいよ指定申請のための書類を整えます。所轄する市町村によって様式が異なる場合があるため、あらかじめ内容を確認しておくと良いでしょう。

小規模多機能型居宅介護は、高齢者の健康と暮らしを地域住民で支える「地域包括ケアシステム」の構築において、中心的な存在となる事業の1つです。介護サービス を提供するだけではなく、地域住民と共に「地域づくり」をする役割も担っているため、地域住民の声に注意深く耳を傾けていくことが大切です。

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ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
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