居宅介護支援事業とは、介護保険制度に基づく 介護サービス を利用しようとする際に、各種申請や相談の窓口となる事業所です。介護支援専門員が常駐し、ケアプラン(介護サービス計画)の作成や福祉用具貸与の手続きにも応じます。居宅介護支援事業所を開設するには、規定の運営基準や施設基準(人員配置・設備等)を満たし、各都道府県の認可を受ける必要があります。

「居宅介護支援事業所の運営基準について」

「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年4月施行)には、居宅介護支援事業所の基本方針や事業認可を受ける上で必須とされる運営基準(管理者の責務や業務内容)や人員配置について規定されています。このうち、運営基準(第三章第四条~二十九条)には以下のような内容が記載されています。

第一三条:運営に関する基準

「介護支援専門員は、居宅サービス計画書の作成に当たっては、利用者の自立した日常生活の支援を効果的に行うため、利用者の心身又は家族の状況等に応じ、継続的かつ計画的に指定居宅サービス等の利用が行われるようにしなければならない。」

第十三条には、上記のように事業所における管理者の役割やケアマネージャーの業務について詳しく記載されています。管理者は、雇用するケアマネージャー(介護支援専門員)に対し以下のような業務を担当させなければなりません。

①利用者の心身機能・生活環境・ニーズ等の アセスメント(評価)
②利用者の自立生活支援を目的とした居宅介護サービス利用計画書の作成
③介護サービス以外に利用できる保健医療サービスや社会資源の活用

ケアマネージャーは、所属する事業所が提供するサービスだけでは適切な支援が困難な場合は、他事業所の紹介等を行う必要があります。正当な理由なくして、サービス提供を拒否することはできません。

④利用者・家族に対するサービス内容の説明・同意書の作成
⑤自立生活に向けて解決すべき課題の把握
⑥利用者宅への定期訪問・サービス利用状況の確認
⑦必要に応じたサービス利用計画の変更

ケアマネージャーは、介護サービス提供に関わる重要事項を文書で説明し、あらかじめ同意を得た上で介護サービスを提供しなければなりません。介護認定を受けていない要介護者に対しては、申請手続きの支援を行います。

⑧サービス担当者会議の開催と利用者に関する情報の共有

サービス担当者会議とは、介護サービスを提供する担当者が集まり、利用者の状態や今後の課題について話し合う場のことを指します。

⑨施設サービス利用に関する支援
⑩福祉用具貸与に関する意見書の作成

担当している要介護者が介護施設サービスの利用を希望した場合、ケアマネージャーは施設への入所がスムーズに行われるよう支援しなければなりません。介護施設から自宅へ移行する時も同様に、適切なサービスが提供されるよう関係機関との連携が求められます。

第十八条:運営規定

「指定居宅介護支援事業所の管理者は、指定居宅介護支援事業所ごとに、次に掲げる事業の運営について重要事項に関する規定として、次に掲げる事項を定めるものとする」

一 事業の目的及び運営の方針
二 職員の職種、員数および職務内容
三 営業日数及び営業時間
四 指定居宅介護支援の提供方法、内容及び利用料その他の費用の額
五 通常の事業の実施地域
六 その他の運営に関する重要事項

第十八条では、管理者が利用者や職員に対して周知すべき「規定」が挙げられています。管理者は事業を開設するにあたり、全て文書化して準備しておく必要があります。

事業の目的及び運営の方針には、事業所がどんなサービスを行っているかを示す「理念」や「職員のあるべき姿」またはその地域にどのように貢献していきたいのかを具体的に示します。利用者向けに作成するパンフレットに記載する「事業所紹介」などがそれに相当するでしょう。また、どんな職種の人が何人在籍し、どのような組織体制で運営しているかも明確にしなければなりません。法律で定められている内容以外にも、地域特性やニーズに応じた独自の業務を行う場合は併せて記載しておきます。

上記に例示した内容は、規定される運営基準のほんの一部分となります。運営基準は、居宅介護支援事業の資質を向上させるとても為になる内容です。上記の他に地域によっては独自の基準を設けているところもありますので、各市町村・厚生労働省の居宅介護支援事業の運営基準などを確認し、より良いサービスと提供できるようにしっかりと準備を整えていきましょう。