超高齢化時代を迎えつつある日本において、これからますます需要が高まるであろうと言われている介護職。中でも訪問介護事業は、比較的低予算で開業することができるため注目の業種です。ここでは訪問介護事業所を立ち上げる前に確認しておきたい 介護保険法(平成24年度改定)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の中から訪問介護の運営基準について、詳しく説明していきます。

訪問介護計画に沿ったサービス提供を!

訪問介護員が利用者の介護をする場合には、「訪問介護計画」を作成することが義務づけられています。訪問介護計画というのは、ケアマネージャーが作成した介護プランのことで、利用者を援助する際の本人や家族の希望、長期的な援助目標や短期的な目標など、介護の実施方法や介護する際の留意点などを細かく記入します。訪問介護員はこの介護計画に基づいて、利用者が日常生活を送るために必要な援助を行わなくてはなりません。
また、介護方法について家族や利用者に理解しやすいように説明をすること、利用者の心身の状況や置かれている環境などを常に把握するように務めることも義務づけられていて、利用者や家族の相談に乗ったり、適切な助言をする必要があります。

サービス責任者が行うべき8つの業務

訪問介護事業所の管理者の業務は、従業員の管理と業務の管理を行うことです。従業員に対して、法律で定められた運営に関する決まりを管理者の責任において守らせるのです。一方、サービス提供責任者の業務としては下記の8つがあげられます。

  • 指定訪問介護の利用申込に関わる調整を行うこと
  • 利用者の状況の変化やサービスに関する意向を定期的に確認すること
  • サービス担当者会議へ出席し、居宅介護支援事業所などと連携をすること
  • 訪問介護員などに対して具体的な援助の目標や援助内容を指示し、利用者の状況をしっかりと伝えること
  • 訪問介護員などが行っている業務内容について把握すること
  • 訪問介護員などのスキルや仕事に対する希望などをヒアリングして適切な調整を行うこと
  • 訪問介護員たちのための研修や技術指導を行うこと
  • その他、サービス内容の管理に必要な業務を行うこと

定めなければならない7つの運営規定

訪問介護事業を立ち上げる場合には、事業所ごとに訪問介護事業所を運営していくための規定が設けられています。運営規定に記載しなければならない事項は、下記の7つになります。

  • 事業の目的及び運営の方針
  • 従業者の職種、員数及び職務の内容
  • 営業日及び営業時間
  • 指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
  • 通常の事業の実施地域
  • 緊急時等における対応方法
  • その他運営に関する重要事項

これらの運営規定については、ひな形をインターネット上で公開している市町村もあるので参考にすると良いでしょう。

スタッフの勤務体制とスキル向上も規定の一つ

利用者が必要とする適切なサービスを充分に提供できるように、訪問介護事業者は事業所ごとに、スタッフの勤務体制などをしっかりと整えておく必要があります。日々の勤務時間だけでなく、職務の内容、常勤か非常勤か、管理者との兼務関係など細かく勤務体制を把握することが大切です。
また、スタッフがより良い 介護サービス を提供するためのスキルアップ研修を設けることも義務づけられています。

上記で紹介したものはごく一部ですが、質の良い訪問介護サービスを提供するために、理解しておきたいものになります。また、独自の基準を設けている自治体や平成27年度(2015年度)介護保険法改正が控えていたりしますので、しっかりと確認して開業に備えましょう。

※上記の内容は、2015年1月28日時点の情報となります。
※以下、2018年6月8日追記

障害福祉サービスの同時提供も

指定訪問介護事業所は訪問系の障害福祉サービスの事業指定もとりやすい制度となっており、これまでも基準該当サービスとして同一事業所で両方のサービス提供を行う訪問介護事業所もありました。2018年4月の法改正では他のサービスにもその考え方を拡大し、「共生型サービス」が新設されました。訪問介護事業所開業時に、障害福祉サービスの指定も受けておくと、高齢者だけでなく、若年の障害者の利用者にもサービスを提供できるメリットもありますので、検討してみてはいかがでしょうか。

共生型サービスについてはこちらの記事もご覧ください。