介護ビジネスを始めるためには、それぞれの事業所ごとに県知事の指定(許可)を受けなければいけません。これは訪問介護事業所を立ち上げるときも同じで、新規指定申請の手続きにはさまざまな書類を提出する必要があります。ここでは、訪問介護事業所開設のために必要な申請書類と、その記述のポイントについて詳しく説明していきます。
訪問介護の指定申請書類とは
訪問介護事業者として介護報酬を受けて 介護サービス を行うためには、会社や法人としての登記を行うだけではできません。介護保険事業者として必要な条件をクリアして、国から許可をもらう必要があります。そのための申請を「指定申請」といい、その際に提出が必要となる書類を「指定申請書類」と言います。
申請の受理は現在、都道府県および市町村に移管されていて、指定申請書の書式や一緒に提出しなくてはいけない書類などは各都道府県によって異なります。
東京都の場合は、指定申請を行う前に管理者もしくは法人代表者が毎月15日前後に行われている「新規指定前研修」を受講することが義務づけられています。
今回は、指定申請書類の書き方のポイントを東京都の場合を例にご紹介します。
【指定申請書】
- 申請者欄(名称、所在地、法人種別、代表者の職種、代表者氏名、代表者の住所)などは、定款、寄付行為、登記内容や条例と一致します。
- 同一敷地内に別の指定事業所がある場合は、その事業所が指定を受けた年月日を記入します。
【訪問介護・介護予防訪問介護事業所の指定に関わる記載事項】
- 管理者欄の内容は管理者経歴書と同じものを記載します。
- 従業者欄は従業者の勤務形態一覧表と同じ内容を記載します。
- 主な掲示事項欄の内容は運営規定と一致します。
【サービス提供責任者一覧表】
サービス提供責任者が3名以上の場合にのみ提出します。
各書類の名称と記述のポイントについて
指定申請のために必要な主な書類や書き方のポイントは、以下の通りです。
1.申請者の定款、寄付行為等およびその登記簿謄本または条例など
- 申請する事業を実施する旨の記載がある定款などの写し
- 3ヶ月以内に発行された登記簿謄本の原本。条例の場合は公報の写し
2.従業者の勤務体制および勤務形態一覧表
- 管理者やスタッフ全員の毎日の勤務時間数(4週分)を記入し、労働時間や休日などが記載された就業規則を添付します。
- 資格証の写しを添付します。
3.管理者の経歴書
勤務に関する経歴などを記載します。
4.サービス提供責任者の経歴に係る書類
- 「介護福祉士」、「介護職員基礎研修修了者」、「訪問介護員養成研修1級修了者」は、資格証の写しを提出することで「経歴」とみなします。
- 訪問介護員養成研修2級修了証の場合、3年以上の介護の実務経験が分かる書類を添付します。
5.事業所の平面図
- 用途、机や備品などの配置が記入されたものを提出します。
- 建物外観、事業所入り口、事務室(事務机、鍵付き書庫棚)、手洗洗浄場所、相談室のカラー写真をA4の台紙などに貼ったものを添付します。
6.運営規定
下記内容について具体的に詳しく定めます。
- 事業の目的や運営方針
- 従業者の職種、員数、職務内容
- 営業日と営業時間
- 指定訪問介護の提供方法やその内容、利用料やその他の費用について
- 事業の実施エリア
- 相談や苦情の対応について
- 事故処理について
- 緊急時等の対応方法について
- その他運営に関する重要事項
上記で説明した内容は東京都での一例(2015年1月現在)になりますが、必要書類については他にも細かなものがあります。事前にしっかり確認しておくことで、新規指定申請の手続きをスムーズに行うことができるでしょう。
[※上記の内容は、2015年1月28日時点の情報となります。]
[※以下、2018年6月8日追記。]
訪問介護事業所の指定申請と同時に共生型サービス事業所の指定申請も
指定訪問介護事業所は訪問系の障害福祉サービスの事業指定もとりやすい制度となっており、これまでも基準該当サービスとして同一事業所で両方のサービス提供を行う訪問介護事業所もありました。介護保険と障害福祉で相互に共通又は類似する項目については、指定の更新の際に申請書の記載又は書類の提出の省略が可能となっており、2018年4月の法改正では「共生型サービス」としてその範囲が拡大されています。訪問介護事業所の指定申請と合わせて、共生型サービスの指定手続きをすることで、事務手続きを簡略化でき、提供できるサービスの種類も増えるので、検討してみてはいかがでしょうか?