15歳から64歳までの生産年齢人口の減少が続くなか、2060年には人口全体の約4割が65歳以上の高齢者になると言われています。 さらに、日常生活に何らかの手助けを必要とする要介護高齢者も増加の一途を辿っており、今後ますます 介護サービス の市場規模も拡大していくことが推測されます。その一方で、介護の現場では人手不足の問題が深刻化しており、各事業所では従業員の確保と定着に向けた取り組みが急務となっています。
介護事業所における従業員の離職率
介護事業所では、従業員一人ひとりの業務負担が大きいにもかかわらず、他業種よりも賃金水準が低いといった理由から、従業員の定着率が非常に低いと言われています。こうした状況に加え、介護業界では、新しく従業員を採用しようと求人を出してもなかなか人材が集まらない事業所も多く、人手不足が慢性化しています。人手不足が解消されない事業所では、各介護従業員の業務負担が増大し、介護サービスの質と量の維持がますます困難になるという悪循環に陥りがちです。
平成26年度に介護労働安定センターが行った介護労働実態調査では、平成25年10月から1年間における介護従業員の離職率は、事業所全体の16.5% であり、同時期における採用率は全体の20.6%に留まることが明らかになりました。この調査結果から考えても、各事業所では従業員の確保と定着に向けた対策にいち早く取り組む必要があると言えるでしょう。
従業員確保、定着に向けた取り組み
人材が集まりにくい傾向にあるといっても、専門性の高い介護や医療を行う施設、事業所には常に多くの人材が集まっています。賃金や勤務時間は職場を選ぶ際に重視される要素のひとつですが、それ以上に働く環境も重視されるようです。従業員確保と定着に向けた取り組みを行う際は、できるだけ多くの人材に関心をもってもらえるような労働環境を整備する必要があります。
労働環境の整備では、介護従業員が高い意欲をもって働き続けていけるよう配慮することが大切です。たとえば、職員に介護スキルに関する個人目標を設定するよう指導するといった方法が挙げられます。キャリアアップに向けて外部研修費用を支援したり、事業所内で専門的な技能指導をしたりするのも良いでしょう。
また、個人の介護スキルや現場実績に応じた給与体系に変更することで労働意欲の維持や介護サービスの質向上を後押しすることもできます。「介護職員処遇改善加算」の算定要件に含まれる「介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件」を満たせば、賃金を改善することにもつながるでしょう。
介護業界は、市場規模が年々拡大し、新規参入企業が増える現状にありますが、少子高齢化に伴う社会保障費用の増大を背景とした介護報酬単価の引き下げにより、倒産を余儀なくされる介護事業所も少なくありません。介護従業員の確保は、収益を維持、拡大する上でも欠かせない要素ですので、早い段階から対策を進めていきましょう。