日本における65歳以上の高齢者の割合は、2025年までに3600万人以上となり、全人口の約3割を超えると言われています。世界にも類を見ないスピードで進む高齢化により国の財政は圧迫され、納税の義務がある若い世代にはさらに大きな負担が生じる恐れがあります。また、要介護高齢者に対する介護の担い手不足も深刻な問題です。家族だけでは支えきれなくなる時代は目の前まで迫っており、「地域包括ケアシステム」を中心とした、社会全体で高齢者の暮らしを支える仕組みづくりが急務となっています。
人口ピラミッドの変化と高齢化率
人口ピラミッドとは、0歳の人口を基底とし、各世代の人口をピラミッド上に積み上げたグラフを指します。人口ピラミッドにより、全人口を占める高齢者または子供、現役世代の割合を視覚的に把握することができます。人口ピラミッドには、その外形により「ピラミッド型(富士山型)」、「釣り鐘型」、「壺型」、「星形」、「ひょうたん型」などに分けられます。
戦後間もない1950年以降の人口ピラミッドは、ほぼ正三角形に近いピラミッド型で推移していましたが、25年後の1975年頃から、24歳以下の人口がほかの世代の人口を下回る「少子化」の影響が見られるようになってきました。その後「出生率の低下」と「平均寿命の延伸」により、人口ピラミッドは典型的な少子高齢化を示す壺型へと推移し、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降は、さらに逆三角形に近い形へと変化していくでしょう。2060年の推計では、総人口が8,000万人代に減少する上に、65歳上の高齢者が占める割合(高齢化率)が全体の4割を超えると見込まれており、高齢者を支える医療や介護の需要は年々増加し続けることが容易に推測されます。
人口ピラミッドデータ
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出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (http://www.ipss.go.jp/)
地域包括ケアシステム推進の背景
これまでにない超高齢社会に突入し、「2050年までには若者1人に対し1人の高齢者を支える時代となる」と予測されています。また、要介護高齢者数は、2010年に約280万人だったのに対し、2025年には470万人まで増加すると言われています。このままでは病気や障害を負っても、すべての国民が適切な医療や介護を受けられない状況に陥る恐れがあります。既存の医療、介護のシステムのあり方を根本的に見直す時期に差し掛かっているのです。地域包括ケアシステムは、こうした状況を打破するために創設された政策のひとつです。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で健康で生き生きと安心して暮らし続けることを念頭に「住まい、医療、介護、予防、生活支援」が一体的に提供されるための仕組みを指します。これまでは、国が主導となってサービスが提供されていたものも、地域ケアシステムの始動により、各自治体が独自のプランによって進めることが可能となるため、より地域住民のニーズに沿ったサービスが、より身近な形で提供されるメリットが生まれます。
地域包括ケアシステムをいち早く実現させるには、すでにご存じの通り、地域ケア会議を中心とした医療と介護の連携強化が欠かせません。医者や看護師などの専門職だけではなく、地元企業や地域のボランティア団体の積極的な活用も期待されています。