団塊の世代が後期高齢者に達する2025年。日本の高齢化率は約30%にまで上昇し社会保障費の確保が困難になることが懸念されています。そこで政府は、公的な医療や介護への依存傾向を改め、病気や障害があっても可能な限り自立した生活を営める地域づくりを推進すべく「地域包括ケアシステム」構築を打ち出しました。介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という)は、その基盤づくりの一助をなす事業として位置づけられています。
ここでは、2025年問題の際に、総合事業はどのような役割を担っていけるのかを解説していきましょう。
2025年問題とは
日本では、世界でも例を見ないスピードで少子高齢化が進行しています。日本ではじめて、全人口に占める高齢者の割合(高齢化率)が7%を超える「高齢化社会」となったのは1970年のこと。そこからわずか四半世紀足らずで高齢化率14%を超える「高齢社会」へ。
2007年には高齢化率21%を超える「超高齢社会」へと進んできました。高齢化社会から高齢社会に至るまでの年数は、フランスで114年、ドイツで42年要していることからも、日本における高齢化のスピードがいかに速いものなのかを理解できるでしょう。
日本の高齢化率は、今後も緩やかなカーブを描きながら上昇が持続すると見込まれています。第1次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた約800万の人々が、後期高齢者(75歳以上)に達する2025年には、高齢化率は30%に到達し、人口の3人に1人が高齢者という時代が到来します。
日本人が長生きであることは大変喜ばしいことですが、日本の場合、高齢化率の上昇と共に、少子化(出生率の減少)が同時に起きているため、私たちの暮らしを脅かすさまざまな問題が生じる恐れがあります。これらの問題を総じて「2025年問題」と呼んでいます。
2025年問題の中でも、最も深刻化しているのが社会保障費増大です。高齢者の医療や介護を支える社会保障費は、若い世代(現役世代)の労働(納税)がなければ持続できません。
1960年には、現役世代11.2人で1人の高齢者を支える構造であったものも、2010年には、現役世代2.8人で1人の高齢者を支える状況に、2025年には現役世代1.8人で1人の高齢者を支える状況になると言われています。
まさに、高齢者を「騎馬戦型」で支える時代から「肩車型」で支える時代が訪れます。
このまま何も対策をせずにいれば、大増税をはじめ、介護離職、親の介護を理由とした経済困窮、介護心中などの問題も他人事ではなくなってくるかもしれません。
2025年に向けて介護業界が抱える課題
後期高齢者(75歳以上)を過ぎると、要介護認定 を受ける高齢者数は一気に跳ね上がります。2025年は、単に高齢者が増えるのではなく、介護が必要な高齢者が増えると言っても過言ではないでしょう。
政府では、これらの問題を解決すべく介護人材の確保や、処遇改善に向けた施策を打ち出していますが、全国的に改善の見込みが得られず、事業者の不安は募る一方です。
介護報酬のマイナス改定により倒産する事業所も急増する最中、地域住民に選ばれるサービスを展開し、いかにして事業所の魅力や強みをアピールしていくかが鍵となっていくでしょう。
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総合事業とのかかわり
2015年から段階的に導入が始められている総合事業は、政府が2025年の実現を掲げる、地域包括ケアシステムの基盤づくりとして実施する事業の1つです。
もちろん、2025年問題を背景に、日本の高齢化率上昇に伴う社会保障費の増大に歯止めをかけようとする思惑がありますが、今後さらに患者数が増加するとされる認知症や、独居世帯の孤独死など、高齢社会ならではの問題を未然に防ぎ、誰もが健康で長生きできる社会の実現を目指す事業であることも忘れてはいけません。
総合事業の導入により、これまで介護予防給付として提供されていたサービスの一部が、市町村が主体となって実施する「地域支援事業」に取り込まれ、地域の特性を活かした独自のサービスのもと、地域住民同士の助け合いや、高齢者の社会参加、介護予防に向けた住民独自の取り組みなどが期待されています。