時代背景や高齢者介護の実情に配慮しながら、数年ごとに報酬改定が行われている介護保険制度。2015年に続き、2018年に実施される介護報酬改定は、医療機関における診療報酬改定も同時に行われることから、地域における医療と介護の連携をより重視した方針が示さました。

ここでは、介護事業所の経営に影響を及ぼすとされる7項目について、その概要と経営者が押さえておきたいポイントを紹介します。

共生型サービスの推進

今回の改定では、医療・介護・障害福祉制度ごとに縦割りで整備されていた公的な支援体制が見直され、個人や世帯が抱える問題に対し包括的に対応する支援体制へ転換を図る「地域共生社会の推進」が大きく掲げられました。

その具体策の一つとして新たに導入されるのが「共生型サービス」です。共生型とは、高齢者と障害者(児)が同一の事業所で継続的にサービスを受けることができるもの。これまで、障害福祉サービスを受けていた障害者が65歳の誕生日を迎えると、介護保険サービスを提供する事業所へ移行してもらうのが原則となっていましたが、共生型サービスを実施する事業所では、事業所を変えることなく必要なサービスを提供できるようになります。

通所介護の基本報酬サービス提供時間区分の見直し

これまで2時間ごとに区切られていたサービス提供時間区分が改められ、1時間ごとに報酬が割り振られます。2時間ごとの区分では、例えば3時間以上4時間未満の提供時間であっても3時間以上5時間未満の区分の報酬が認められていましたが、改定後は、3時間以上4時間未満といった1時間ごとの区分にて、実際にサービスを提供した時間に沿った報酬を請求することになります。

通所介護では、この他にも大規模事業所を中心とした基本報酬のマイナス改定や、要介護度や日常生活自立度に応じたインセンティブ制度が新設等、自立支援・介護の重度化防止を見据えた方針が発表されています。

居宅介護支援は特定事業所集中減算の見直し

特定事業所集中減算 とは、ケアマネージャーが作成したケアプランについて、紹介件数の多い同一法人事業所の割合が全体の8割を超える場合に減算が適応されていたもの。これは、公正かつ中立なケアマネジメントを行うために作られたもので、前回の改定では、全居宅サービスに対象が拡大されましたが、今回の改定で再び対象のサービスが訪問介護・通所介護・福祉用具貸与の3つに戻されました。請求事業所数の少ないサービスや主治医の指示により利用する医療系サービスが除外されました。

認知症関連の加算

認知症の方に対する多くのサービスにプラス改定が行われています。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、常勤の看護職員を配置した場合に算定できる医療連携体制加算(Ⅱ)〜(Ⅲ)が新設。

短期入所生活介護、短期入所療養介護では、認知症ケアに関する専門的な研修を修了している職員がサービスを提供した場合に、認知症専門ケア加算を算定できるようになりました。また、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、特定施設入居者生活介護で、若年性認知症の方を受け入れた場合の加算も新設されています。

介護医療院の創設

転換や廃止の方針が打ち出されている、長期療養を必要とする患者を主に入院させる医療療養病床と、介護保険制度のもと長期療養を必要とする要介護者を主に入院させる介護療養型医療施設の移行先として、新たに介護医療院を創設することが決まりました。

介護医療院は、医学的管理を必要とする要介護者を入院させ、終末期ケアや看取りおよび生活施設としての機能を備える施設にするとしています。また、比較的軽症の患者においては、在宅ケアへの橋渡し役を担うことも想定されています。

福祉用具貸与費用の提示

福祉用具の販売や貸与にあたっては、利用者に対しより適切な価格提示と説明をすることが求められます。各事業所では、用途や機能や特徴、価格の異なる福祉用具を複数提示し利用者の選択を促すとともに、利用者の不利益にならないよう全国の貸与データに基づき国が公表する価格情報(価格上限、全国平均貸与価格)を把握していなければなりません。

介護ロボットの活用

介護職員の負担軽減、高齢者の自立生活や認知症予防、コミュニケーションを促進するロボットを活用した事業者に対し、介護報酬にかかる人員基準等を緩和するとしています。例えば、移乗介助の際に介護者が体に装着し腰にかかる負担を軽減するロボットや、抱え上げ動作をアシストするロボットのほか、排泄介助中の座位保持を支援する機器、高齢者がベッドから落ちそうになった時や徘徊していることを知らせる見守りセンサーなどが想定されます。

2018年の介護報酬改定はサービス内容や事業所の規模等によって大きな影響が出る改定となりました。この機会に事業所全体のコストを見直し事業所経営を安定させていきましょう。

※上記に紹介した内容は、2018年2月末までに厚生労働省から発表されたものを参考に作成しています。