「楽すけデイ&施設記録帳」の導入で、手書きで3回以上行っていた転記がなくなり、記録業務の時間が約半分に短縮されました。

事業所概要

所在地:山口県岩国市
サービス種別:通所介護・介護予防通所介護
利用定員:30名
導入製品:『楽すけデイ&施設記録帳』Windows PC1台とiPad 2台で使用

渡辺薬局デイサービスセンター なごやか
管理者 介護支援専門員 看護師 精神保健福祉士 社会福祉士 弘中 節子様
生活相談員 介護福祉士 松本 あかね様

渡辺薬局デイサービスセンター なごやか様では、2022年12月からニップクケアサービス株式会社の、iPad(タブレット)で介護記録ができる「楽すけデイ&施設記録帳」を導入して活用しています。導入前に課題としてあげられていたことが、どのように解決されたのか。介護スタッフの働き方に影響はあったのか、などについて、同所 管理者 介護支援専門員 看護師 精神保健福祉士 社会福祉士 弘中 節子様、生活相談員 介護福祉士 松本 あかね様に詳しくお話を伺いました。

医療依存度の強い人を受け入れられる施設

──渡辺薬局デイサービスセンター なごやかについて教えてください。

デイサービスセンター なごやかはこのビルの2階にある

渡辺薬局は面分業*対応自立型の三代目薬剤師が経営する山口県岩国市の薬局です。2000年の介護保険法施行に合わせて、居宅介護支援事業(特定事業所加算Ⅱ)を始めました。その後、2005年に岩国駅前近くに定員30名で通所介護事業(デイサービス)をスタートしました。ニーズが高かったため、面積的に可能な35名まで定員を増やしました。それでも利用者が増える状況でした。

そして2010年に、現在のデイサービスセンター なごやかがあるビルを取得し、認知症対応型通所介護(定員12名)、訪問介護事業 (自立支援対応)とともに、デイサービスセンター なごやか(一般通所介護)をスタートしました。このビルには一般・高齢者の長期滞在可能な短期賃貸マンションも併設しています。ご存知のように岩国には基地があります。戦後、基地関連などで働くことを目的に西日本各地から移り住んできた人たちがいました。現在、高齢者になっているその人たちの中には無年金・無保険の方も多く、そうした人たちの受皿にもなれればいいと考えています。

デイサービスセンター なごやかの特徴としては、もともと医療機関がベースでスタートしていますので、医療依存度の強い人を受け入れられるように、開設当初から看護資格を持つ職員を重点的に雇用しています。現在のデイサービスでは無資格者でも働くことができますが、当所は介護福祉士を取得している職員の比率が高いことも特徴の一つです。デイサービスセンター なごやかのスタッフ18名の内訳は、看護師7名、介護福祉士11名、柔道整復師1人で、全員が介護職員初任者研修を取得しています。利用者は63名が登録しており、1日あたり20名~25名が利用しています。

*「面分業」とは、薬局が、不特定多数の医療機関からの処方せんを受け付ける運営形態のこと

手書きで同じ項目を多いと3回以上転記

管理者 介護支援専門員 看護師
精神保健福祉士 社会福祉士
弘中 節子様

──デイサービスセンター なごやかでは、2022年11月よりニップクケアサービス株式会社の、iPad(タブレット)で介護記録ができる「楽すけデイ&施設記録帳」を導入しています。導入前にはどのような課題があったのですか。

利用者に関するあらゆる記録をすべて手書きで行っていました。まず、クルマでお迎えに行くと、乗車前に検温を行い記録します。自宅で測られた方はその体温をお聞きして、その体温を記録します。来所していただくと、当所ではまず漢方のお茶でうがいをしてもらい、手洗いをして、上履に履き替えて席に着きます。好きな飲物を飲んで、少しゆっくりしてかからバイタル(体温・脈拍・血圧)を看護師が測り、健康チェック表と呼ぶ、当日利用される方の一覧表に記録します。健康チェック表には、排泄の有無・量など、食事量、入浴の有無などを記録します。月初には身長・体重も測定して記録します。

健康チェック表に記録された内容は、利用者一人ひとりのカルテに転記をするとともに、カルテにはレクリエーションや個別機能訓練などその日に何をしたかを記録します。このカルテへの転記と記入は午後の時間帯、レクリエーションを行っているときに、スタッフをレクリエーション担当と記録担当に分けて転記と記入を行いました。ちなみにカルテは登録者63名分、つまり63冊あり、毎日、その日の利用者の分を出して並べておきました。
また、カルテとは別にご家庭との連絡用ツールとしてノート型の連絡帳があり、そこにも同様の転記と記入を行います。

申し送りに関しては、簡単な内容は利用者のカルテに記入しますが、全員での共有が必要な内容になると、申し送り簿に別途転記や記入を行いました。それ以外にも毎月1回、ケアマネージャーに月ごとの様子を伝えるための情報をピックアップしてまとめる作業もありました。これも転記と記入です。

──お聞きするだけでたいへんな内容ですね。特にたいへんと感じられたのはどのようなことでしょうか。

同じ項目を多いと3回以上転記をしなければならないことですね。転記を行えば転記ミスや転記漏れも起きてしまいます。特に利用者のカルテですが、1ページに9マスあり9日分の記入が行えるのですが、毎日同じスタッフが記入するわけではありません。先にお話ししたように、リクリエーションの時間に担当を分けて記入しています。仮にある利用者のカルテを1日分記入し忘れたまま、次の日の記入を行った場合には、1ページすべてを書き直す必要があります。1日分の記録がないままにはできませんので、その1ページに記入したスタッフ全員に再度記入してもらい、印鑑を捺してもらいます。

本来は利用者のケアをその日のスタッフ全員で行うところが、転記作業のためにできていませんでしたので、何とかしなければならないと考えていました。

リーダーを置き、困ったことを困ったままにしない仕組みを作る

生活相談員 介護福祉士
松本あかね様

──「楽すけデイ&施設記録帳」はどのようにして知ったのですか。

もともと、2005年にデイサービスセンター なごやかを開所するときから、ニップクケアサービス株式会社の介護請求ソフト「楽すけ」を導入して活用していました。ですので「楽すけデイ&施設記録帳」のご紹介は受けていました。以前からこうしたシステムを導入できないかは検討していました。お話ししたような転記などの時間が短縮できたり、手間を省けたり、ミスを防げるのではないかと考えていました。
あるとき、IT導入補助金を活用できないかと思って調べたところ、適用を受けられることがわかりました。そこでニップクケアサービス株式会社のサポートを受けながら申請したところ、無事に交付決定され導入を進めることができました。

──「楽すけデイ&施設記録帳」そのものの導入はいかがでしたか。

介護請求ソフト「楽すけ」から利用者のデータは移行できますので、事前の準備などはほとんど手間がかかりませんでした。むしろスタッフが今までのやり方を変えることに対して、反発があるのではないかと心配しました。一部では本当にやらなければならないのか、といった声も聞かれましたが、きちんと趣旨を説明したところ、スタッフ全員ががんばってやりましょうといってくれました。

──実際には、どのような業務から「楽すけデイ&施設記録帳」を使い始めたのですか。

まず2022年11月に導入が決った後で、iPadとはどんなものなのか、さわって使い勝手を知って、慣れてもらうためにスタッフルーム2台置いておき、自由に使ってもらいました。
そして12月から従来の手書きでの記録の加えて、「楽すけデイ&施設記録帳」での記録を始めました。最初はバイタルの入力、入浴の有無、口腔ケア(歯磨)のチェックからスタートしました。やはり漏れがあってはいけないので、手書きでの記録業務はそのままで、それに加えて「楽すけデイ&施設記録帳」での記録を行いました。慣れていない段階でしたし、単純にスタッフの業務は増えるかたちになりましたので、その頃が一番たいへんだったと思います。

まずは数字の入力、チェックの次は文章の入力にチャレンジしました。経過記録の入力を短くてもいいから始めたのです。次に看護師さんが記入するバイタルの記録を、紙に記録してからiPadに入力するのではなく、最初からiPadに入力してもらうようにしました。そして経過記録に加えて、申し送り事項も「楽すけデイ&施設記録帳」に入力するようにしました。結果として2023年1月からは手書きではなく、「楽すけデイ&施設記録帳」での記録に1本化できました。

──短期間での移行は素晴しいと思います。スタッフにはさまざまな年代の方がいらっしゃると思いますが、年齢が高い方も大丈夫でしたか。

スタッフは全員スマートフォンを使いこなしているので、操作性という意味ではなじみやすかったようです。
ちなみにスタッフの最高齢は75歳ですし、60代も何人もいます。わからないことがあればリーダーに聞くようにしましたので、スムーズに導入ができました。

──いまお話に出たリーダーとは、通常の役職ですか、それとも導入のためのものでしょうか。

導入に際して、2名のリーダーを設けました。事前にニップクケアサービス株式会社のレクチャーを受けて、「楽すけデイ&施設記録帳」について一通り理解しているスタッフを2名用意しました。
ですから、導入時に何かわからなかったり、入力ミスをして訂正方法がわからないといった場合は、困っていないで、すぐにリーダーを呼ぶことにしました。困ったことを困ったままにしない仕組みを作ることで、スタッフはスムーズに操作に慣れることができました。

記録業務の時間が半分に短縮できた

──「楽すけデイ&施設記録帳」の導入効果を教えてください。

1. 記録業務の時間が半分に短縮できた。
利用者のカルテ1冊1冊への転記と記入が、導入前はスタッフ数名で行って約1時間かかりました。「楽すけデイ&施設記録帳」導入後は、その時間が約半分になりました。その削減できた時間は、利用者と過す時間にあてることができますので、利用者をケアする時間が増えました。また、当日の利用者のカルテを人数分揃えて出して置くことはなくなりましたので、探して出す作業もなくなりました。

2. 経過記録などの文章の組立と修正が楽になった。
以前はボールペン書きでしたので、1回記入してしまい訂正する際には訂正印を捺す必要がありました。いまは文章を一度組み立てた後で編集して修正したり、ここはもっと詳しく記入しよう、ということがとても容易にできるようになりました。また、手書きの場合は読みにくいこともありますが、いまはiPadのフォントで表示されますから、とても見やすくなりました。

3. カナ入力できるのが助かった。
パソコンと同様のキーボードだけでなく、iPadはカナ入力ができます。するとあいうえお順に並んでおり、パソコンをあまり使っていないスタッフでも、スマホと同じ感覚で入力することができます。幅広い年代のスタッフがいても、全員が使いこなせている理由の一つかもしれません。

4. 情報の管理と更新がしやすい。
パソコンを使ってファイルを作っていた際は、作成者によってタイトルのつけ方や保存場所が異っていました。作成者以外のスタッフが文書の更新や修正をしようとした場合、まず文書がどこにあるか、この文書で合っているのかの確認から始めなくてはなりませんでした。「楽すけデイ&施設記録帳」は情報が一元管理されていますので、誰でも編集と更新ができます。細かな部分ですが効率化に役立っていると思います。

5. 2台のiPadのそれぞれの更新がすぐに反映される。
例えば看護師がバイタルを測定しているとき、1台のiPadを持って測定し入力後に更新すると、もう1台のiPadにもすぐに反映されます。すると誰がバイタル測定済で誰が未測定かがわかります。以前は1枚の健康チェック表で記録していましたので、測定・記録している看護師しか、誰が測定済で誰が未測定かはわかりませんでした。
これは口腔ケアななど他の記録の際も、終った人と終っていない人がわかりますので、次の方への案内などがスムーズに行えるようになりました。

6. 入浴は当所の入浴形態に合わせて用語を変更。
これは工夫している点ですが、入浴に関してはテンプレートに設定されている入浴形態から、当所の入浴形態に合わせた用語に変更して使用しています。こうしたテンプレートの変更が自由にできる点も使いやすい一因だと思います。こうした自由度がもっと高まるといいですね。

渡辺薬局デイサービスセンター なごやか様では、入浴に関しては独自の入浴形態を表す単語に変更している

引き続きのサポートと提案に期待

──「楽すけデイ&施設記録帳」の今後の活用予定やリクエストがあればお教えください。

現在、排泄の記録だけは「楽すけデイ&施設記録帳」のデフォルトの設定内容と、当所の管理内容がうまく合致していないため、紙ベースで運用しています。このあたりの用語の設定などが、もう少し自由にできると助かりますし、紙ベースの記録をすべてなくしたいと考えています。
また、当日の利用者一覧が、仮に文字が小さくなったとしても一覧表で画面一杯に表示されるとありがたいですね。ぱっと見て、利用者の状況、何が済んでいて何が済んでいないのかがわかれば、より効率的な運営や利用者への案内ができると思います。

以前からお願いしていることとしては、写真撮影があります。入浴などでご家族が気づいていないかもしれない状態を発見することもあります。写真で記録できて、ご報告できるとよりよいコミュニケーションにもつながるのではないかと考えています。

──「楽すけデイ&施設記録帳」、ニップクケアサービス株式会社への期待などがありましたらお教えください。

こちらからの要望に対して、できることはすぐに対応してもらえる点を評価しています。「楽すけ」も含めてサポートをしていただいていますので、当所の運営には欠かすことができないパートナーです。先にあげたリクエストへのご対応と、引き続きのサポート、ご提案に期待しています。


弘中 節子様(中)、松本 あかね様(右)と弊社・上平(左)

渡辺薬局デイサービスセンター なごやか様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

◎渡辺薬局デイサービスセンター なごやか様のホームページ:
https://www.watanabe-ph.co.jp/care_resthome05.html
※ 取材日時 2023年3月